お断り: 本記事は 2026 年 5 月 28 日に NHK 放送技術研究所(東京都世田谷区)で開催された「技研公開 2026 / NHK TECH EXPO 2026」を訪問した際のメモです。展示内容は会期中の現地観覧に基づきます。

はじめに

弊社の取引先でもある NHK さんの研究開発成果発表イベント、技研公開にお邪魔してきました。会期は 2026 年 5 月 28 日(木)〜 31 日(日)、入場無料、午前 10 時〜午後 5 時。今年は「NHK TECH EXPO 2026」を併設しての同時開催です。

詳細・正式な技術解説は NHK 技研公開 2026 公式サイト および 展示 3「コンテンツの信頼性を高める来歴情報技術」のページ をご参照ください。本記事はあくまで現地に行った所感メモです。

入口の案内ポスター。左が技研公開2026、右が NHK TECH EXPO 2026 のキービジュアル

今年のテーマは「拓く、支える、これからも」。16 項目の研究開発成果が展示として並んでいます。会場のエントランスにはゲートが用意されており、テンションが上がります。

会場入口に立つ「技研公開2026」のバナー

ゲートをくぐると展示エリア。平日の昼間でしたが、学生からお年寄りの方まで老若男女の来場者で賑わっていました。

技研公開2026のゲート。来場者が展示エリアへ進んでいく様子

今年の主要 4 テーマ

入口で配られたフロアマップに、今年の展示テーマが整理されています。

1階展示マップとプログラム概要が掲載されたパンフレット

3 番を拡大したものがこちらです。

4 つの主要テーマが書かれたパンフレット拡大

弊社が C2PA 専業ということもあり、目的はもうほぼ 1 つに絞られていまして、まっすぐ展示 3 のブースへ。

展示 3: コンテンツの信頼性を高める来歴情報技術

ここが今年の本命でした。展示テーマ 3 はまさに C2PA / Content Credentials の世界そのもの。フェイク映像・生成 AI コンテンツの真贋を放送局がどう担保するかは、業界全体での共通課題です。NHK さんがそこに研究開発リソースを当てている、というのは C2PA 業界の人間としても素直に嬉しいトピックです。写真でも分かる通り、ブース前は説明員を囲んで来場者が途切れない盛況ぶりでした。

展示 3 ブース。「来歴情報の検証・署名機能のある Web ブラウザー」と「放送局のワークフローにおける来歴情報の活用」が並ぶ

ブースは大きく 2 つのデモで構成されていました。

観点デモ内容
来歴情報を検証できる Web ブラウザー検証機能をブラウザーにネイティブ実装した試作。署名側は別途、編集アプリ側で行う構成
放送局のワークフローにおける来歴情報の活用取材から編集・送出までの放送ワークフロー上で、来歴情報をどう引き継ぎ活用するか

検証をプラグインや外部ツールではなくブラウザーのネイティブ機能として持つ、というのは Content Credentials の普及シナリオでよく語られる「OS / ブラウザーへのビルトイン」の方向性そのもので、見ていてかなり胸熱でした。署名はあくまで編集アプリの責務、検証は閲覧側であるブラウザーの責務、という役割分担も実運用を素直に反映していて納得感があります。

加えて、先日の記事 で取り上げた Gemini の C2PA 検証統合に関する Google 公式ブログ Making it easier to understand how content was created and edited でも、Chrome に C2PA の検証機能を順次組み込んでいくと明言されています。NHK 技研の試作ブラウザーと方向性が完全に揃っていて、検証はブラウザーが持つ、という時代の流れと C2PA の意図をあらためて感じます。

放送局のワークフローは、撮影 → 編集 → 送出という多段のパイプラインの中で、素材が何度も加工・トリミング・合成されていきます。素材レベルの来歴情報をどう引き継ぎ、最終的な放送波 / 配信動画にどう紐付けるか、加えて他社に素材を共有する際に不要な個人情報を落としてから渡すといった運用上の処理まで含めて設計されていて、放送ならではの問題設定が見えて面白かったです。

撮影段階で Content Credentials が付くデバイスの例

ワークフローの一番上流、つまり「素材を撮る」段階のデモも置かれていました。実際の会場にはこのほかにもう 1 台、より本格的な撮影機材も並んでいて全部で複数パターンが展示されていたのですが、ここでは手元の写真にあるミラーレスカメラと Pixel 10 Pro の例を紹介します。どちらも撮影した時点でその場で Content Credentials が付与される、という挙動でした。

ミラーレスカメラの背面液晶。撮影画像とすぐ横に Pixel が並んでいる

Pixel 10 Pro の画像詳細。「カメラ撮影のメディア」「コンテンツ認証認定情報」が表示されている

放送・報道の素材取得デバイスとして「業務用カメラ」「ミラーレスカメラ」「スマホ」といった複数の入口があり、どの入口でも Content Credentials がきちんと付与される、というのが面白いポイントでした。

ここはちょうど直前に当社ブログでも取り上げた、Gemini アプリの C2PA 検証統合や、ChatGPT 生成画像の Content Credentials と地続きの話で、

  • 生成側(ChatGPT / Gemini)が Content Credentials を載せる
  • 撮影側(カメラ / スマホ)も Content Credentials を載せる
  • OS・ブラウザー・放送局ワークフローが受け取って検証する

という来歴情報のレイヤーが、生成・撮影・流通・放送の全方向から一気に立ち上がりつつある、というのを実機で確認できました。Content Credentials は仕様だけ追っていてもピンと来ないですが、こうやって撮って → 開いて → 表示されているのを見ると一気に腹落ちする感覚があります。

おわりに

そんなに細かいレポートにはしませんが、放送局がこの領域に正面から研究投資している、というメッセージを直接受け取れたのが何より大きな収穫でした。生成 AI 全盛のこの時代に、来歴情報・Content Credentials は「あったらいい」以上の、放送・報道インフラの基礎部品になりつつあるように感じました。

技研公開 2026 は 2026 年 5 月 31 日(日)まで、入場無料です。C2PA・来歴情報まわりに関心のある方は、ぜひ展示 3 のブースを覗いてみてください。他のブースにもとても面白いものがたくさんあったので、ぜひ足を運んでみてください。

なお、現地では展示 3 の C2PA / 来歴情報に関する内容について、NHK のご担当の方に詳細にご説明いただきました。改めて感謝を申し上げます。

弊社は引き続き、こうした放送・メディア事業者の来歴情報活用を、C2PA 専業の立場から技術支援していきたいと思っています。

参考リンク