SBOM実装でサプライチェーンリスクを可視化|企業のセキュリティレベルを向上
近年、サプライチェーン攻撃の増加により、企業のソフトウェア資産管理がセキュリティ対策の重要な要素として注目されています。SBOM(Software Bill of Materials:ソフトウェア部品表)は、アプリケーションやシステムに含まれるすべてのソフトウェアコンポーネントを可視化し、サプライチェーンセキュリティを強化する手法です。
本記事では、SBOM実装によるサプライチェーンセキュリティ強化の実践手法について詳しく解説します。脆弱性管理からライセンス管理まで、企業のセキュリティレベル向上に役立つ包括的な対策をご紹介します。
SBOM(ソフトウェア部品表)の基礎知識と重要性

SBOM(Software Bill of Materials)は、製造業におけるBOM(Bill of Materials:部品表)の概念をソフトウェア開発に適用したものです。アプリケーションやシステムで使用されているすべてのコンポーネント、ライブラリ、依存関係を詳細にリスト化し、ソフトウェアサプライチェーンの透明性を向上させます。
SBOMに含まれる主要な情報
SBOMには、コンポーネント名、バージョン、ライセンス情報、提供元、依存関係などの詳細な情報が含まれます。これにより、システム全体のソフトウェア構成を正確に把握し、セキュリティリスクの特定と管理が可能になります。
サプライチェーン攻撃への対策
近年急増するサプライチェーン攻撃では、信頼できるソフトウェアコンポーネントが悪意のあるコードに置き換えられるケースが多発しています。SBOMによる可視化により、このような攻撃を早期発見し、影響範囲を特定できます。
コンプライアンス要件への対応
米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)や欧州のNIS2指令など、各国でSBOM提出を義務化する動きが加速しています。早期の導入により、規制要件への確実な対応が可能になります。
脆弱性管理の効率化
SBOMがあることで、新たに発見された脆弱性の影響を受けるコンポーネントを即座に特定できます。これにより、パッチ適用の優先順位付けと効率的なセキュリティ対応が実現できます。
SBOM生成・管理ツールの選定と実装

効果的なSBOM実装には、適切なツールの選定と統合が不可欠です。開発言語、プラットフォーム、組織の規模に応じて、最適なSBOM生成・管理ツールを選択し、CI/CDパイプラインに組み込むことで、継続的なサプライチェーンセキュリティを実現できます。
主要なSBOM生成ツール
Syft、CycloneDX、SPDX Toolsなど、オープンソースから商用まで多様なSBOM生成ツールが利用可能です。それぞれ対応する言語やフォーマットが異なるため、開発環境に適したツールを選定します。
- Syft:多言語対応のオープンソースツール
- Snyk:脆弱性管理統合型のSBOM生成
- JFrog Xray:アーティファクト管理との連携
- GitHub Dependency Graph:GitHub連携型
CI/CDパイプラインとの統合
ビルドプロセスの一部としてSBOM生成を自動化することで、開発チームの負荷を軽減しながら常に最新の部品表を維持できます。GitHub Actions、Jenkins、GitLab CIなどと連携した自動化を実装します。
- ビルド時の自動SBOM生成
- アーティファクトへのSBOM添付
- 品質ゲート機能での検証
- 脆弱性チェックの自動実行
SBOM形式の標準化
SPDX(Software Package Data Exchange)やCycloneDX形式の採用により、ツール間の相互運用性を確保し、業界標準に準拠した管理体制を構築できます。組織全体での形式統一が重要です。
- SPDX形式の採用
- CycloneDX形式の活用
- JSON/XML出力の対応
- メタデータの充実
脆弱性管理とライセンス管理の統合戦略
SBOMを活用した包括的なリスク管理では、脆弱性対応とライセンス管理を統合的に実施することが重要です。コンプライアンス要件を満たしながら、セキュリティリスクを最小化する継続的な管理体制を構築します。
継続的な脆弱性監視
CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)データベースとSBOMを照合することで、新たに発見された脆弱性が自社システムに影響するかを自動的に判定できます。CVSS(Common Vulnerability Scoring System)スコアに基づく優先順位付けにより、効率的な対応が可能です。
ライセンス違反リスクの回避
オープンソースライブラリのライセンス条件を正確に把握し、商用利用可能性やコピーレフト条項への対応を適切に管理します。ライセンスの互換性確認により、法的リスクを未然に防止できます。
サプライヤーリスクアセスメント
ソフトウェアコンポーネントの提供元について、開発者の信頼性、メンテナンス状況、セキュリティ対応実績を評価します。リスクの高いコンポーネントの特定と代替手段の検討を行います。
自動化による効率化
脆弱性スキャン、ライセンスチェック、ポリシー準拠性の確認を自動化することで、人的リソースの負荷を軽減しながら一貫性のある管理を実現します。アラート機能により迅速な対応が可能になります。
組織におけるSBOM導入と運用体制の構築
成功するSBOM導入には、技術的な実装だけでなく、組織全体での理解と協力が不可欠です。開発、運用、セキュリティ、法務などの各部門が連携し、継続的なサプライチェーンセキュリティ強化を実現する体制を構築します。
段階的な導入アプローチ
パイロットプロジェクトから開始し、成功事例を積み上げながら全社展開を図ります。小規模な範囲での検証により、組織に適したプロセスとツールを確立し、リスクを最小化しながら導入を進めます。
教育・トレーニングプログラム
開発者、運用担当者、セキュリティ担当者に対する体系的なトレーニングを実施し、SBOM の重要性と活用方法への理解を深めます。継続的な学習により、組織のセキュリティ意識を向上させます。
ガバナンス体制の確立
SBOM管理のポリシー策定、承認プロセス、監査体制を整備します。役割分担の明確化と責任範囲の定義により、組織全体での一貫したサプライチェーンセキュリティ管理を実現します。
TechThanksでは、お客様の組織特性と既存システムに応じて、最適なSBOM実装戦略をご提案しています。サプライチェーンセキュリティの強化により、企業のデジタル資産を包括的に保護するソリューションを提供いたします。
SBOMの導入やサプライチェーンセキュリティについてご相談がございましたら、まずは現状のセキュリティ体制と課題をお聞かせください。最適な実装プランと導入ロードマップをご提案いたします。