DevSecOps成熟度を段階的に向上|セキュアな開発運用体制の構築戦略
DevSecOpsは、開発(Dev)、セキュリティ(Sec)、運用(Ops)を統合し、ソフトウェア開発ライフサイクル全体にセキュリティを組み込むアプローチです。多くの組織がその重要性を認識している一方で、実践においてはさまざまな成熟度レベルが存在します。
こちらでは、DevSecOpsの成熟度モデルと具体的な実践ロードマップを詳しく解説します。組織の現状を評価し、段階的に成熟度を向上させることで、セキュアで効率的な開発運用体制を実現できます。
DevSecOps成熟度モデルの5つのレベル

DevSecOpsの成熟度モデルは、組織がセキュリティを開発プロセスに統合する能力を評価し、改善の方向性を示す指標です。一般的に5つのレベルに分類され、各レベルは異なる特徴と課題を持ちます。
レベル1:初期段階(Initial)
セキュリティはリリース直前や後に対応する「後付け」の状態です。開発チームとセキュリティチームは分離しており、セキュリティテストは手動で行われ、多くの時間を要します。
レベル2:管理段階(Managed)
セキュリティポリシーが存在し、一部のセキュリティテストが自動化され始めます。開発チームはセキュリティの重要性を認識し始め、基本的なセキュリティプラクティスを実践します。
レベル3:定義段階(Defined)
セキュリティが開発プロセスに組み込まれ、SAST(静的アプリケーションセキュリティテスト)やDAST(動的アプリケーションセキュリティテスト)がCI/CDパイプラインに統合されます。
レベル4:測定段階(Measured)
セキュリティメトリクスが定義され、継続的に測定・評価されます。脆弱性の発見から修正までの時間、セキュリティテストのカバレッジなどが追跡され、改善に活用されます。
レベル5:最適化段階(Optimized)
セキュリティは組織文化の一部となり、全てのメンバーがセキュリティに対する責任を持ちます。継続的な改善が行われ、新しい脅威への対応も迅速に行われます。
DevSecOps実践ロードマップ:段階的導入アプローチ

DevSecOpsを成功させるためには、現状の成熟度レベルを正確に評価し、段階的に改善していくことが重要です。以下のロードマップは、各成熟度レベルにおける具体的な取り組みを示しています。
フェーズ1:基礎の確立(0-6ヶ月)
まずはセキュリティ意識の向上と基本的なプロセスの整備から始めます。開発チームへのセキュリティ教育、基本的なセキュリティポリシーの策定、手動セキュリティテストの標準化を行います。
- セキュリティチャンピオンの任命
- 基本的なセキュリティトレーニングの実施
- コードレビュープロセスへのセキュリティ観点の追加
- 脆弱性管理プロセスの導入
フェーズ2:自動化の導入(6-12ヶ月)
セキュリティテストの自動化を進め、CI/CDパイプラインに統合します。SASTツールの導入、依存関係スキャンの自動化、コンテナイメージスキャンの実装を行います。
- SASTツールのCIパイプライン統合
- セキュリティゲートの設定
- 自動脆弱性スキャンの定期実行
- セキュリティダッシュボードの構築
フェーズ3:統合と拡大(12-18ヶ月)
セキュリティプラクティスを全ての開発プロジェクトに拡大し、DASTやIASTなどの高度なテスト手法を導入します。セキュリティメトリクスの定義と測定を開始します。
- DAST/IASTツールの導入
- セキュリティKPIの定義と追跡
- インシデントレスポンスプロセスの確立
- セキュリティコミュニティの形成
DevSecOps成熟度評価指標と測定方法
DevSecOpsの成熟度を客観的に評価するためには、適切な指標を設定し、定期的に測定・分析することが重要です。以下の指標を活用して、継続的な改善を推進します。
プロセス指標
DevSecOpsプロセスの成熟度を測る指標です。セキュリティテストの自動化率、コードレビューでのセキュリティ指摘率、セキュリティポリシーの遵守率などを評価します。
- セキュリティテストの自動化率
- セキュリティゲートのパス率
- セキュリティトレーニングの参加率
- セキュリティポリシーの更新頻度
成果指標
DevSecOpsの実施結果を測る指標です。脆弱性の発見数と重要度、修正までの平均時間、セキュリティインシデントの発生件数などを追跡します。
- 脆弱性の平均修正時間(MTTR)
- リリース前に発見された脆弱性の割合
- セキュリティインシデントの減少率
- コンプライアンス監査の合格率
文化指標
組織文化におけるDevSecOpsの浸透度を測る指標です。開発チームのセキュリティ意識、セキュリティチャンピオンの活動度、部門間連携の頻度などを評価します。
- セキュリティ意識調査のスコア
- セキュリティ関連の改善提案数
- クロスファンクショナルな会議の頻度
- セキュリティコミュニティの参加率
DevSecOps導入における一般的な課題と解決策

DevSecOps導入では、技術的な課題だけでなく、組織文化やプロセス上の様々な課題に直面します。これらを事前に把握し、適切な対策を立てることが成功の鍵となります。
開発スピードへの懸念
「セキュリティテストが開発を遅らせる」という誤解があります。実際には、早期にセキュリティ問題を発見することで、後工程での大幅な手戻りを防ぎ、全体的な開発サイクルを短縮できます。
スキルセットの不足
開発チームにセキュリティ知識が不足しているケースが多く見られます。継続的なセキュリティ教育、ハンズオントレーニング、セキュリティチャンピオンの育成を通じて、組織全体のスキルレベルを向上させます。
ツール統合の複雑さ
様々なセキュリティツールをCI/CDパイプラインに統合する際の技術的課題です。段階的なツール導入、ツールチェーンの標準化、自動化スクリプトの作成により、統合の複雑さを軽減します。
誤検知の管理
セキュリティツールが生成する大量の誤検知により、開発チームが疲弊するケースがあります。ツールの適切な設定、誤検知の分析とチューニング、ホワイトリストの管理により、有効なアラートのみに絞り込みます。
DevSecOps成熟度向上で実現するビジネス価値
DevSecOpsの成熟度を向上させることで、セキュリティリスクの低減だけでなく、開発サイクルの短縮、品質向上、コスト削減など、様々なビジネス価値を実現できます。セキュリティを「コスト」ではなく「投資」として捉え、競争優位を確立します。
TechThanksでは、お客様の現状のDevSecOps成熟度を評価し、段階的な成熟度向上プランをご提案しています。豊富なDevOps/DevSecOps導入実績とセキュリティ専門知識を活かし、効果的なDevSecOps体制構築を支援いたします。
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