オンプレミスとAWSを専用線で接続|低レイテンシーと高セキュリティを両立

企業のIT環境において、すべてをクラウドに移行することが必ずしも最適解とは限りません。機密性の高いデータの管理、既存システムとの連携、レイテンシー要件など、様々な理由でオンプレミス環境を維持しながらクラウドを活用するハイブリッドクラウド構成が求められています。

こちらでは、AWS Direct Connectを中心としたハイブリッドクラウド環境の構築手法について、設計から実装、運用まで実践的なノウハウを詳しく解説します。専用線接続により、インターネットを経由しない安全で安定した通信環境を実現できます。

AWS Direct Connectによるハイブリッドクラウドのメリット

AWS Direct Connectによるハイブリッドクラウドのメリット

AWS Direct Connectは、お客様のデータセンターとAWSクラウドを専用のネットワーク接続で結ぶサービスです。インターネットを経由しない専用線により、セキュアで安定した通信環境を実現し、オンプレミスとクラウドのシームレスな統合を可能にします。

一貫した低レイテンシー

専用線接続により、インターネット経由と比較して一貫して低いレイテンシーを実現できます。リアルタイム性が求められるアプリケーションや、大量のデータ転送が必要な業務において、パフォーマンスの向上が期待できます。

高い帯域幅と安定性

1Gbpsから100Gbpsまでの専用帯域を確保でき、インターネットの混雑状況に左右されない安定した通信が可能です。大規模なデータ移行やバックアップ処理も効率的に実行できます。

セキュリティの強化

インターネットを経由しない専用線接続により、通信経路でのデータ傍受やサイバー攻撃のリスクを大幅に低減できます。金融機関や医療機関など、高いセキュリティが求められる業界での採用も進んでいます。

ネットワークコストの削減

大量のデータ転送が必要な場合、インターネット経由でのデータ転送コストと比較して、Direct Connectを利用することでトータルコストを削減できる可能性があります。

ハイブリッドアーキテクチャの実現

オンプレミスの既存システムとAWSクラウドサービスを組み合わせた、柔軟なハイブリッドアーキテクチャを構築できます。段階的なクラウド移行や、特定のワークロードのみクラウド化するなど、ビジネス要件に応じた構成が可能です。

Direct Connect導入時の設計ポイント

Direct Connect導入時の設計ポイント

AWS Direct Connectを導入する際は、ネットワーク設計、接続方式の選択、冗長化構成など、様々な要素を考慮する必要があります。ビジネス要件と技術要件のバランスを取りながら、最適な構成を設計することが重要です。

接続モデルの選択

Direct Connectには専用接続とホスト接続の2つのモデルがあります。専用接続は単一のお客様専用の物理接続で、1Gbps以上の帯域幅が必要な場合に適しています。ホスト接続は、パートナーが提供する接続を通じて、より柔軟な帯域幅オプションを選択できます。

仮想インターフェース(VIF)の設計

Direct Connection上に作成する仮想インターフェースには、プライベートVIF、パブリックVIF、トランジットVIFの3種類があります。それぞれの用途に応じて適切に選択し、VLANタグやBGP設定を行います。

  • プライベートVIF:VPC内のプライベートIPアドレスへのアクセス
  • パブリックVIF:AWSパブリックサービスへのアクセス
  • トランジットVIF:Transit Gateway経由での複数VPCへのアクセス

冗長化構成の実装

高可用性を確保するために、複数のDirect Connect接続による冗長化構成を推奨します。アクティブ/アクティブ構成やアクティブ/スタンバイ構成など、要件に応じた冗長化設計を行います。

ルーティング設計

BGP(Border Gateway Protocol)を使用したダイナミックルーティングの設計が重要です。AS番号の割り当て、ルート広告の制御、フェイルオーバー時の動作など、詳細な設計が必要です。

セキュリティ対策

Direct Connect自体は暗号化されていないため、機密性の高いデータを扱う場合は、IPsec VPNとの組み合わせや、アプリケーションレベルでの暗号化を検討します。また、ネットワークACLやセキュリティグループによるアクセス制御も重要です。

ハイブリッドクラウドの実装パターンと活用シーン

AWS Direct Connectを活用したハイブリッドクラウドには、様々な実装パターンがあります。ビジネス要件や技術的制約に応じて、最適なパターンを選択することが成功の鍵となります。

データセンター拡張パターン

オンプレミスのデータセンターをAWSクラウドに拡張し、リソースを柔軟にスケールアウトできる構成です。繁忙期のみクラウドリソースを活用したり、災害対策サイトとして利用することができます。

段階的移行パターン

既存システムを段階的にクラウドへ移行する際の中間構成として活用できます。アプリケーション層から順次移行し、データベースは最後に移行するなど、リスクを最小化しながら移行を進められます。

バックアップ・災害対策パターン

オンプレミスのデータをAWSにバックアップし、災害時にはAWS上でシステムを復旧する構成です。Direct Connectの安定した帯域により、大容量データのバックアップも効率的に実行できます。

ビッグデータ分析パターン

オンプレミスで収集したデータをAWSの分析サービス(Amazon EMR、Amazon Redshiftなど)で処理する構成です。大量データの転送もDirect Connectにより高速に実行できます。

開発・テスト環境パターン

本番環境はオンプレミスに維持しながら、開発・テスト環境をAWSに構築する構成です。必要な時だけリソースを起動でき、コスト効率的な開発環境を実現できます。

Direct Connect導入・運用のベストプラクティス

Direct Connect導入・運用のベストプラクティス

AWS Direct Connectを効果的に活用するためには、導入時の適切な設計だけでなく、運用フェーズでの継続的な最適化も重要です。実践的なベストプラクティスをご紹介します。

モニタリングとアラート設定

CloudWatchを活用して、Direct Connectの接続状態、トラフィック量、エラー率などを監視します。異常を早期に検知できるよう、適切なしきい値でアラートを設定することが重要です。

定期的なフェイルオーバーテスト

冗長化構成を採用している場合は、定期的にフェイルオーバーテストを実施し、障害時の動作を確認します。手順書の整備と訓練により、実際の障害時にも迅速に対応できる体制を構築します。

帯域幅の最適化

トラフィックパターンを分析し、必要に応じて帯域幅の増減を検討します。ピーク時の使用率と平常時の使用率のバランスを考慮し、コスト効率的な帯域幅を選択します。

ドキュメンテーションの整備

ネットワーク構成図、IPアドレス管理表、ルーティング設定、運用手順書など、包括的なドキュメントを整備・維持します。変更管理プロセスと連携し、常に最新の状態を保ちます。

コスト管理と最適化

Direct Connectの月額料金とデータ転送料金を定期的に確認し、利用状況に応じた最適化を行います。複数のVPCで共有利用することで、接続あたりのコストを削減することも可能です。

ハイブリッドクラウド構築を成功させるための次のステップ

AWS Direct Connectを活用したハイブリッドクラウドは、オンプレミスとクラウドの長所を組み合わせた、柔軟で安全なIT基盤を実現します。専用線接続により、パフォーマンス、セキュリティ、信頼性の向上が期待できます。

TechThanksでは、お客様のビジネス要件と既存環境を詳細に分析し、最適なハイブリッドクラウド構成をご提案しています。Direct Connectの導入から運用まで、豊富な実績に基づいた支援を提供いたします。

ハイブリッドクラウドの構築をご検討中の方は、まずは現在の課題と将来の構想をお聞かせください。技術的な実現可能性から費用対効果まで、包括的なアドバイスをご提供いたします。